あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

「……うん」
「好きだったのに」

私の10年の想いを届けたかった胸に手を伸ばして、ぎゅっと握りしめる。

「私、本気で」
「……紗良ちゃんの気持ち、ちゃんと伝わったよ」

服をしわくちゃに握った手の上から、雄太さんの手が重なって、優しく包む。

「だから……ありがとう。すごく嬉しかった」
「……嬉しい?」
「うん」

優しくすがめた目で、私をまっすぐに見つめて、雄太さんは言った。

「紗良ちゃんの気持ちには応えられないけど、そんな風に思ってくれてたってことを言ってくれて嬉しかったよ。正直、嫌われていると思ってたから」
「え?なんで?」
「なんでって……思春期に入ったぐらいから避けられてる気がしてて」


うわ……それ、気づかれてたと同じでしょ。

恥ずかしすぎる……


多分、真っ赤になっちゃった熱い頬を片手で押さえると、ふふっと小さな笑い声。
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