再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

祥と健斗は愛し合っていた、と思う。
「と思う」がつくのは、祥はそう信じているけれど、健斗がどう思っていたかは本人にしかわからないからだ。

健斗にとって今の祥は全くの赤の他人。それなのに、「私とあなたは愛し合っていたのよ」と祥が言ったとしたら、健斗は「そうだったのか」と信じ込むのだろうか。

「危険危険!簡単に人の事信じちゃダメ!」と注意したいくらいだ。

それに、祥に関する記憶がすっぽり無くなっているということにも意味がある気がするのだ。

人の記憶がどうなっているのかはわからないけれど、引き出しのようなものじゃないかと祥は思っている。

重要なことが上から順番にしまわれていて、下に下がるごとに重要度も下がっていく。

ご両親や医学に関することは重要度の高い上の引き出し、祥は『忘れてもOK』という下の方の引き出しにしまわれていたから、忘れ去られたのではないか。

祥は深くため息をついた。
考えれば考えるほど、どうすればいいのかわからなくなる。

考えることに疲れて祥はごろっと横になった。

健斗にとってどうすることが幸せなのか。その答えを知りたいと思った。

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