再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

つむぎが祥の手伝いをするために、キッチンに戻ってきた。
その背中には『宝物』と書いてある。

宮本さんは、子ども用のTシャツを作り始めた。まだ試作の段階のようだが、先日何枚か送ってきたのだ。

「つむちゃんに着せて、友だちの反応を知らせてほしい」
そう書かれたメモが同封されていたので、いわゆるモニターということらしい。

子ども用のTシャツのロゴは『宝物』『公園』『爆睡』など、子どもを意識したものになっている。

「『宝物』なんて宮本さんが考えたとは思えない。今までで一番まともだし、子ども用のロゴっていうところもいいよね。本当に宮本Tシャツ?」
祥は感心しつつも失礼なことを言っていた。

『毛玉』と『宝物』が仲よくキッチンに並ぶ。

健斗はそんな二人を微笑ましく眺めながら、ソファーで穣をあやしていた。

三ヶ月になる穣は最近表情が豊かになってきて、あやすと可愛く笑いかえしてくれる。
今も機嫌よく「あー」と言いながら、自分のげんこつにかぶりついているところだ。

子どもの成長は本当に早く、見ていてとても楽しい。
でも、穣がすくすくと成長すればするほど、つむぎの赤ちゃんの頃も見たかったなと思うのだ。

そんなことを言うと、前向きな妻に「後ろを振り返るな!」と叱られそうなので口にはしないが。


「パパ、ご飯できたよ」
「ハイ」

呼ばれて素直にダイニングに向かう。

つむぎはフォークを出したり、冷蔵庫から必要なものを出してきたり、クルクルとよく動き回っている。
来月六歳になるつむぎだが、『このくらいの年の子でこんなに気の利く子はいるのか?』と驚くばかりだ。

ロンドンでは満五歳の九月に小学校に入学するので、つむぎはもう小学校に通っている。
日本より半年早く進むので、そのせいかなとは思うけれど、やっぱりうちの子は特別だと固く信じている。

祥は臨月まで働き続け、今は育休中だ。
でも、来週から穣を日本の保育園にあたる『ナーサリー』にあずけ、復職することになっている。

「泉ホテルとの交換研修が決まったんだし、最後までしっかりと勤め上げないと。麻季のためにも頑張らないとね」

健斗たちは来年の三月に日本に帰ることが決まったのだ。
だから、ロンドンでの暮らしも残すところあと四ヶ月。
祥は出国ギリギリまで働く予定で、仕事に対する熱意は相変わらずすごい。

祥が日本に帰ったあとは、麻季ちゃんが研修に来ることになっているので、なおさら力が入っているのだろう。

「麻季にいい状態で引き継ぎたいもの」

そう言う祥の顔は輝いている。
祥が好きな仕事を頑張れるように、健斗も精一杯力になりたいと思う。

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