再会は甘い恋のはじまり…とはかぎりません!(おまけ追加しました)

祥の父親は東京で開業医をしている。祖父も曾祖父も医者なので、代々医者の家系と言えるだろう。

祖父は優しい人だったが、父は一体いつの時代の人間なんだと呆れるほどの頑固親父だ。
小さな頃からそうだったので、父に甘えた記憶はほとんどない。

医者が最高の職業だと思い込んでいる父からは、事あるごとに「医者を目指せ」と言われてきた。年の離れた兄が医者になったので、もういいでしょと言っても、聞き入れてもらえない。

祥は学力的にも医者を目指すのは無理なのだ。それがようやく父にもわかると、今度は「医療関係の職業につけ」と言い出した。ホテルに勤めたいという、祥の夢はガン無視なのだ。

京都に進学先を決めたのには、「医療系の大学に入らないなら家を出ろ」と言われたことも関係している。

気が弱く父に逆らえない母は、父と祥が対立する中でオロオロするだけだった。
母に味方をしてもらえなかったことは、父に反対されたことよりも辛く心に残っている。

学費と家賃を出してもらっている身で偉そうなことは言えないが、両親と縁を切るにはどうすればいいんだろうと真剣に考えている。

比較的仲のいい兄も、大学入学後一度も家に帰らない祥に、「祥の頑固なところは親父にそっくりだな」と余計なことを言ってくる。全く祥の周りには腹の立つ医者しかいないのだ。


眼の前の彼に気づかれないように、心の中でため息をつく。

医者かぁ。ほんと残念。
医者とわかった時点で、恋愛対象からは除外だ。
『除外』なんて上から目線で言える立場じゃないけど。

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