男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 右手で指示の合図を出したセドリックに続いて、ヴァンが小さく頷いて相棒のサーバルを呼んで足を進めた。テトとジンが互いに目配せして、瓦礫の重なった入口側周囲の確認に入る。

 出来るだけ物に触れて動かしてしまわないよう、男達が慎重に調査へと動き出した。同じように、ほど良い緊張感をもって足を進め出したユリシスが、ノエルの声がした発生源に目を向けて、確認するように質問を投げた。

「ド真ん中という事は、ここに何かしら、重要な物が隠されて保管されている可能性が高い、と受け取っても?」
『そういう認識で間違いはないだろうぜ。術具ってのは、持ち主不在でコントロールされていない状態であれば、強いモノほど、そこ在(あ)るだけで外部に影響を与えちまう代物なんだ。ここまで魔力の気配が満ちているとなると、恐らく、そいつが媒体になって、聖域として稼働している可能性もある』

 つまりはかなり期待出来るって事だよ、と、ノエルが赤い瞳を好戦的に光らせた。姿は見えていないものの、声からその様子を察したのか、ユリシスが「なるほど」と独り言のように口にして調査を開始するのを、ラビは横目にチラリと見届けた。
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