男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 今回の最高潮な不機嫌の理由は、同じ深い藍色をした彼の兄によるところのものだった。ラビは『旅に出る』という目標をずっと持っていたため、セドリックを見ていると彼の事が思い出されて、奴のせいでこうして王都へ向かう馬車に揺られているのだと苛立ちが蘇った。

 手紙を受け取ったのも、つい先程の事だ。わざわざ遠い村まで駆け付けた、警察機関でもっとも権限を持った『王宮警察部隊』に知らせを宣言されたのも、同じ頃である。

 考える時間もなく着替え、まとめた荷物と共に馬車に詰め込まれて、今に至る。

 そもそも自分は、田舎暮らしの薬草師兼獣師である。なのに何故、騎士団専属の獣師として所属しなければならないのだろうか?

 この国には、十八歳未満の獣師に適用される特別な法令があるらしく、才能を持った子供の保護と技量確認を目的とした『貴重人材適正法』とやらで、正式に獣師として登用されてしまったようなのだ。

 正直言って、全く嬉しくない。
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