男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
ラビ達の帰還
 これほどまで大きな狼は見た事がない、と、ひそひそと小声で交わされ注目される中を、立派な漆黒の毛並みを揺らして黒大狼が進む。

 獣の相棒を連れるのは、ここでは『獣師です』という看板を背負っているようなものであるらしい。ラビは、王宮に到着してからずっと、「あの若さで専属獣師らしい」「国家獣師への推薦もあるらしいぞ」と噂される声に慣れなくて、緊張していた。

 胸元に首飾りの輝きを覗かせたノエルが、その隣を歩きながら、周りに聞こえない声で『気にすんな、物珍しいだけさ』と言う。それでもラビは、金髪金目以外で注目された経験はなかったから、実に落ち着かなかった。

 先程、遺跡に向かった際にかかった日数よりも早く、ラビ達は王都入りをして王宮に到着した。今度はセドリックとユリシスだけでなく、ヴァン達も総団長の執務室に案内される事になった。

 馬車から降りたノエルを見た際、衛兵はギョッとして身構えていたし、王宮内を進む間、誰もが金髪金目よりも、そちらを警戒して距離を開けていた。
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