男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
「御苦労だった。無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」

 執務室で待っていたルーファスが、案内役の男が部屋を閉めてすぐ、そう切り出した。姿が見えるようになったノエルに目を留めて、弟のセドリックとは違う薄い色合いをした藍色の瞳を細める。その美貌に馴染んだ愛想笑いは、作り物との区別が付かないほど自然な暖かさを滲ませていた。

「君がノエルか。なるほど、頼もしいくらい『立派な黒い狼』だ――その胸元にあるのが、例の『宝』かい?」
『ああ、これが例の術具だ。ザイアース遺跡は、古い時代に神殿として機能していたらしい。そこを任されていた『ラティーシャ』という人間が残した遺産だ』

 ノエルは手短に答えると、術具をこうして【実体化】に使える事と、『砂の亡霊』の正体が、術具に掛けられていた複数の魔術によるものであった事を簡単に説明した。

 ルーファスは話を聞き終えると、追って質問はせず、続いてセドリック達に目を向けて「まずは報告を聞こう」と、一人ずつ話すよう促した。
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