一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
丁寧な文字で清水宛に綴られた手紙だった。
「お読みいただけませんでしょうか?」
「よろしいのですか?」
個人的な内容かと思って遠慮したが、清水がぐいと匡の方に差し出してくる。
しかたなく受け取って読み始めた。
どうやら小椋家の家政婦が、清水にあれこれと訴えているようだ。
とりとめもなく勢いで書かれた内容だったが、情にあふれた文章だ。
「これは……新社長は前妻のお子さんなんですね」
「はい。紗羽さんと新社長は義理の兄妹になります」
読み進めると、とんでもない内容だということがわかった。
匡が真剣な眼差しになったのを感じたのか、清水は額に汗を滲ませている。
ひと通り読み終わった匡は清水に断りを入れて、山根にも読むように手渡した。
「なんと!」
読み進める山根はよほど驚いたのか、疑問を口にしてしまっている。
「あの小椋社長のお嬢さんがそんな目に? え? え? これは後見人が財産を搾取しているんじゃありませんか?」
「山根、黙って読んでくれ」
「あ、はい。申し訳ございません……ですがこれは……」
苦しそうに清水が話し始めた。
「私や弁護士が会社にかかりきりになっている間に、新社長一家が大阪から東京のお屋敷に引っ越してきて好き勝手をしていたようです」
「それで、この家政婦が訴えてきたんですね」
「はい。紗羽さんの部屋を女中部屋に移すと聞いて猛反対したらあれこれと苦情を言われて解雇されたらしく、退職金もなく首になってしまったんです」
「それで前社長のお嬢さんが、家政婦代わりに家のことをさせられているんですか?」
社長令嬢がまさかと思いながらも、山根が念を押すように清水に尋ねた。
「はい。社長ご自慢の優秀なお嬢さんでしたのに、このままでは大学にも行けないのではと家政婦が心配して手紙を寄こしてきまして……」