一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「クシュン!」

翔がくしゃみを連発してから咳き込み始めた。

「すぐに窓を開けますね」
「助かるよ。花粉と同じくらい化学薬品もダメなんだ」

空気が淀んでいるせいかと思い、紗羽はドアや窓を開け放つことにした。

「シックハウスかな、工事のあと閉め切っていたから」

翔は咳き込んでしまったまま座り込んでいる。
紗羽まで目がチカチカしてきたので、急いで玄関から奥へ進みながら窓を開けていく。

父が読書しながら過ごしていた書斎。
母が料理の腕を振るっていたキッチン。
家族三人でお喋りしたリビング。
知人を招いて気軽なバーベキューパーティーを開いていたテラス。

(お父さん、お母さん……匡さんがここを買い戻してくれたのよ)

懐かしさで胸が一杯になってきた。
高校二年の秋から胸の奥にしまっていた思い出が、色褪せることなく紗羽の目の前に広がっていく。

「居心地がよさそうな別荘だね」

「ええ、両親のお気に入りだったんです」
「家具の趣味もいいし、ずっと住んでいたいくらいだ」

翔は咳やくしゃみが落ち着いてきて気分もよさそうだ。

「気に入ってくれたら嬉しいです。アレルギーは治まりましたか?」
「薬が効いてきたから楽になったけど、紗羽さんは目が真っ赤になってるよ」
「そういえば、さっきから目が痛くて」

泣きそうになったせいかと思ったが、痒みが強くて目が痛いくらいだ。

「内装工事になにか問題があるのかな?」
「でも一時的なものなら工事のせいとも言えません。空気を入れ替えたら大丈夫だと思います」

「じゃあ、アレルギーの薬飲んでおく?」

久しぶりの別荘で感情が昂っていたせいか、紗羽はさっき酔い止めの薬を飲んだことを忘れていた。
無意識のうちに、翔が渡してくれたアレルギーを抑える市販の薬を口に入れてしまった。



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