俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
よくよく見れば、自分が抱きついているような体勢だ。
恥ずかしさがこみ上げ、慌てて離れようとする。しかし音夜はチャンスを得た笑いをすると、腰を抱いてさらに引き寄せた。


「顔が赤いね?」

「は、離してっ……」


暴れると、腕はさらに力を込めた。
膝の上に乗ってしまっていて、おしりに衣類越しの筋肉質な足の感触があって頭の中がパニックになる。

ご機嫌そうな瞳に下から覗きこまれ、美夜は顔を赤らめた。

自分の記憶のほとんどは、バチバチとした応酬をくりかえしていた音夜なので、甘い雰囲気にどうも慣れない。


「美夜はほんと、なんでも一生懸命でかわいいな。そういうところすごく好きだ。旅行業と観光ビジネスの勉強もしてるんだろ? 偉いよ」


仕事中は名前で呼ばないようにすると約束したのに、甘い顔になった音夜に眉をしかめて見せた。


「誰にきいたの……?」

「支配人。バイタリティー高いってめちゃくちゃ褒めてたよ」


お客さんに観光について質問されれば、自分で答えられるようにしたいと思うし、この旅館をもっと盛り上げたいと思っている。
それには知識を増やすのはあたりまえのことだ。


「本は買ったけど、勉強は全然できてないの。まだ時間もうまく使えてなくて、夜尋が寝てからやればいいんだけど、いつのまにか寝落ちしていることが多くて……」

「うん……。ちょっと瘦せたよな。隈もできてるし。俺の責任だ」


親指が目の下を撫でる。


「そんな、子育てが大変で疲れるのはどの親も一緒だよ。音夜のせいじゃ……」

「いや、これからは俺も夜尋の世話をするよ。よかったら、保育施設の送迎や寝かしつけも任せてほしい……どうかな……?」


音夜は控えめに提案した。
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