俺様御曹司が溺甘パパになって、深い愛を刻まれました
興奮した夜尋を寝かしつけるのに時間がかかってしまい、予定していた勤務開始時間をオーバーしてしまう。

音夜と美夜は、廊下を辛うじて歩いていると見えるスピードで進んでいた。
競歩だ。


「あーもう、全然寝なくてびっくりした!」


歩きながら作務衣のたすき掛けをする。
紐を首に掛けて、両腕をさっと通す。

邪魔になる袖を纏めると、音夜が「なにそれ格好いい」と自分もやりたがった。


「朝までいるってだけで、あんなに興奮してくれるなんて嬉しいよ。毎日続けたら慣れるんじゃないかな?」


音夜の袖を纏めてあげながら話す。


「そんなの、大変じゃない」

「本当に朝まで過ごさせてくれたら、それほど大変じゃないんだけどな」


媚びた物言いに口をとがらせる。
ここで照れるとまたからかわれるので、無視をした。


「では、お風呂の備品補充と脱衣所の清掃から。
美才治さんは男湯をお願いします。髪の毛とか嫌がる人多いので、床と洗面の確認を念入りに。
風呂場と露天も一週してください。最後に使用済みタオルの回収と補充を。それが終わったらしい館内の巡回にまわります。ウォッチオーバーは作動していますか?」


防水のケースに入れたスマホを取り出すと、先ほどまで三人でいた部屋が映し出された。

すやすやと眠る夜尋の寝顔が見える。


「寝顔たまんないね。少し汗ばんでる。暑かったかな。肌掛け、薄手の方にしてあげればよかった」


音夜は画面を眺めて頬を緩めた。
いつまでもニコニコと眺めているので急かす。


「仕事しないとですよ。時間おしてるんですから」

「わかってるよ。子供を一人残して仕事をすることがこんなにもそわそわするなんて。ほんと慣れないな。もう少しコストが上がっても、広角カメラにしたほうがいいよね。あと、あちらの音は届くけど、会話が出来ないじゃない? いざという時通話も繋げられると、さらに安心感が増すと思うんだ」

「そうですね、安心感が増えると、仕事に集中しやすくなると思います」


意見を述べると音夜はそうだねと満足げに頷いた。


「さ、今夜もがんばろう。とりあえず30分後に集合でいいかな」

「よろしくお願いします」


働き方を真剣に考えてくれる音夜に、頼もしい気持ちを抱いて、仕事に入った。
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