うっかり助けた魔女の恩返しで、好きな人の元に自動で向かう魔法を靴にかけられ、彼に触れると発動する淫紋を刻まれた私に起こった椿事。
(やばいやばいやばいぃぃぃぃ! なんてことすんの!! あの魔女、本当に助けるんじゃなかった!!)

 肩口までのふわふわした薄茶色の髪を揺らしながら、ブランは道行く人が見れば不自然とも言えるほどに、街の大通りをスタスタと早足で歩を進めていた。

 どうしてあの時親切心を出してしまったのかと、自分の意志とは全く関係なく滑らかに動く足で歩きながら彼女は激しい後悔をしていた。

 このまま道順通りに行けば、ブランが幼い頃から想い続けている剣士ロルフが居るだろう冒険ギルドに辿り着いてしまう。

 ブランはそれまでになんとか、自分でも全く理解出来ていないこの事態の言い訳を、考えなければいけない。

(けど、これをどうやって説明するの!? 道端で苦しんでいた魔女を助けたら、恩返しに心の奥にある願いを叶えてあげるから、そのまま好きな人の所に行きなさいって、ロルフの所に勝手に向かっちゃう魔法を靴にかけられたって言うの!? おまけとか言って、ロルフに触れると発動する淫紋とか……要らないんだけど!! 本当に、余計なお世話!! ロルフには、そんなこと言えない!! どうしたら良いの……絶対!! そんなの、嫌なんだけど!!)
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