エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい～すべてをかけて君を愛し抜く～

「ねぇ、紅葉。本当にこのままお兄ちゃんと結婚してもいいの？」

　真剣な面持ちでこの話をされるのは、何度目だろうか。

　ある平日の昼下がり。父が入院する病院にお見舞いに行った帰り、駅前のオープンカフェで待ち合わせしたのは久次さんの妹である、田上(たのうえ)由香里(ゆかり)だ。

　彼女とは久次さんとの婚約をきっかけに知り合い、同い年ということですぐに打ち解けることができた。

　まだ出会って間もないけれど、いづれ身内になる関係ということもあって、様々な話をお互いしている。

　ボーイッシュなショートカットが似合う彼女は、兄の久次さんと同じ釣り目だけれど、きつい印象は受けなかった。それは由香里がいつも自然な笑顔を向けてくれているからかもしれない。

　由香里には幼い頃から親の決めた婚約者がいて、相手が十歳年上ということもあり、二十歳になってすぐに結婚したそうだ。

　政略結婚ながら由香里たちは愛を育み合い、誰から見ても幸せな結婚生活を送っている。

　そんな由香里は、女性軽視する父とそんな父の考えに共感している兄を毛嫌いしていた。