エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
 由香里の母もまた彼女が幼い頃に病死してしまったが、世間体を気にしての政略結婚で、父には愛人もおり、母が亡くなっても涙ひとつ流さなかったそうだ。

 それだけではない、病気を患う母を気遣うこともなかったという。久次さんも母を見下したところがあったようで、亡くなっても悲しまなかったそう。
 できるなら父と兄と縁を切りたいさえも言っている。

「何度も言っているけど、私にはその道しかないの」

「でも……っ! 自分の家族のことを悪くは言いたくないけど、お兄ちゃんと結婚したら絶対に幸せにはなれないよ? 紅葉には幸せになってほしいの」

 今にも泣きそうな顔で言う由香里に胸が苦しくなる。

 私だって久次さんと結婚して幸せになれる自信がない。でも私には彼と結婚する以外の選択肢がないんだ。

「幸せって言っても、様々な幸せのかたちがあると思うんだ。だって久次さんと結婚することになれなければ、こうして由香里と出会うことはできなかったんだよ? 私、久次さんと結婚することと由香里と親友になれないこと、どっちがいいと聞かれたら絶対に前者を選ぶ。由香里と出会えない人生なんてもう考えられないから」

「紅葉……」
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