忘れさせ屋のドロップス
「見てみて、遥ー、凄いね、海の中ってこんな感じなのかな」
あたしは目の前の大きな水槽を覗き込みながら遥を見上げた。
以前も遥に、連れてきてもらった都内で一番大きな水族館だ。
蒼いスノードームみたいに、魚のウロコがキラキラ光って、海の中を自由に泳ぎ回る魚達が降り積もる雪のように重なったり離れたりしながら、降り注いで見える。
「……魚になりたいな」
魚みたいに、綺麗な所だけで息をして、綺麗なモノだけ見つめられたらいいのに。
あたしの心の中は醜い嫉妬で濁りすぎて、もう魚にすらなれそうもなかった。
何だか涙が出そうになって、何とか飲み込むように抑える。
「華菜が魚になったら、すぐわかりそうだな」
ポツンと呟いたあたしに遥が唇を持ち上げた。
「え?どうゆう意味?」
「目が大きくて、どうせピンクとか紫とか、カラフルな魚だろ。誰よりもよく笑う目立つ魚だから、すぐわかりそうだなって」
「遥、それ褒め言葉?」
意地悪く笑った遥は、どうだろな、と私の頭をようやく、くしゃっと撫でた。
遥は気づいてたのかもしれない。あたしが泣きそうだったこと。