忘れさせ屋のドロップス

「あ、ごめんな」

ーーーーどうしてなんだろう。

 ずっとずっと遥だけを見てるのに。ずっと遥の側にいて、遥のこと分かってるつもりだったのに。

 一番欲しかった遥の心は、仄かに光る海月に安らぎを求めるように、寄り添うように、揺れて漂って、もうあたしのところには戻って来ない。

 着飾って笑顔を振りまくことでしか、遥を惹きつけられない魚の私より、いつも静かにただ小さな明かりを灯して待ってくれている海月のあの子に、遥は傷ついた心を包んでもらったのかもしれない。


 水族館の外に出ると、夕陽はとっくに沈んで、空を見上げると小さな星が幾つか光っていた。

 車に乗り込んで、エンジンをかけようとする手を止めると、遥はあたしの方をじっと見た。

ーーーーもう、ごまかせない、そう思った。


「華菜、話しがあるんだ」

「わかってるって、夜景見ながら聞くからっ」

 精一杯笑って、いつもの声のトーンで返事をしたあたしを遥は黙って見ていた。  

「どしたの?遥、早くー」


 急かすように、遥の左腕を揺すった私の手を、遥がそっと掴んだ。


「ごめんな」

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