忘れさせ屋のドロップス
遥の匂いと遥の高い体温に包まれて、私はゆっくり瞳を開けた。

遥は白のTシャツ姿で長い睫毛を揺らしながら静かに眠っていた。
 
昨日眠るまでは黒いスウェットだったのにと不思議に思いながら、起こさないように、私の背中に回されている遥の腕を持ち上げる。

腕の下を潜ろうとして、遥の黒のスウェットを着ていることに気づいた。

私には長すぎるスウェットの袖が雑に捲られている。

自身で着た覚えのないスウェットと、昨日遥と抱き合ったことを思い出して、顔が熱くなった。


「何してんの?」

遥の腕を持ち上げたまま、真っ赤になってた私の頭上から、いつものぶっきらぼうな遥の声が降ってきた。 

「え?……あ、の……えっと」

恥ずかしくて遥の方を見れない私の頬を、遥の掌が容赦なく掴む。


「や、待って。遥、ちょっと」

ふっと笑うと遥が、ぎゅっと私を包み込んだ。

「何?そんな恥ずかしいことでもあった?」

意地悪く笑う遥の顔が浮かんだけど、私は首だけを振った。 


「本当に?」

「ちょっとだけ……」

「あっそ」

遥が私の首元に唇を寄せた。

「っ……遥っ……」

すこしだけチクンとして何をされたかすぐに分かった。

もう遥をみられない。

それなのに、遥の大きな掌が無理やり私の顔を遥に向ける

「は、るか、ちょっと……」

どんな顔したらいいかわからない私を見ながら、真っ赤じゃん、と遥が口角を上げた。


そのまま、遥が私の肩に頭をもたげて、身体の距離が近くなる。

遥の体温がじんとあったかくて安心する。

私は遥の背中に手を回して、身体の角度を変えようとした。

その時、ズキンと下腹部が少し痛んで、私は思わず少しだけ体を浮かせた。
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