忘れさせ屋のドロップス
ーーーーでも有桜は高校生だ。

ちゃんと卒業して、夢だって見つけて欲しい。俺みたいな宙ぶらりんな人生は送って欲しくないから。
何ももってない今の俺に、有桜に側に居てもらう資格なんてないんだ。有桜の将来を俺は奪えない。奪いたくない。

「じゃあ、はっきり言ってるよ。高校生とかマジでないから!一気に冷めた!ここまで言わなきゃ分かんない?さっさと出てけ!」

真っ赤な瞳から涙が頬を伝う。

もう俺は拭ってやることも抱きしめてやることも出来ないから。

ちゃんと突き放してやらなきゃいけない。

ーーーー有桜が、俺をちゃんと『忘れられる』ように。

「……違うよね?遥、そんなこと、……ひっく……思って、ない……よね?」

俺は、最後まで有桜を泣かしてばかりだ。肩を震わせて泣き出した有桜を見ながら、俺は両手を、固く握りしめた。

「いい加減、そうやって泣かれんのもウンザリしてんだよ」   

俺が居なくても泣いたりすんなよ。もう側に居てやれないけど、いつも有桜を想ってるから。


「……そ、だよね……ごめん、ね……でもね……」

有桜の両手が俺を包み込んだ。

「遥が好きなの……一緒に居たいの……もう、泣か……ないから……泣いたり、しないから……遥の側に居させて……ひっく……おねがい」  


俺は唇を噛み締めた。 

抱きしめてやるのは簡単だ、泣かして突き放して、思ってもないこと言って有桜を傷つけて。心が苦しくなる。

(……決めただろ、最後まで有桜を突き放すって) 

ーーーーそう、決めたことなのに。

分かってるはずなのに。泣いてる有桜を見ると気持ちが揺らぎそうになる。思わず手を伸ばしてしまいそうになる。

本当は側に居て欲しいから。

俺の側に居て、ただ笑ってくれたらそれでいいのに。


もう叶わない。一緒には居られない。

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