忘れさせ屋のドロップス
「私は……遥の側にやっぱり居たくて、……それに遥は那月さんのことが本当に好きで、私を……見ることはない、……って思ってて。それでいいんです」
「よくないよ。それじゃあ、遥も有桜ちゃんもダメになるから。遥を甘やかすことも、有桜ちゃんが我慢する事もどちらも互いのためにはならないから」
渚さんはいつも正しい。私と遥の事を大事に思って、いつも心配してくれる。
「アタシね……遥から直接聞いた訳じゃないけど、遥にとって有桜ちゃんは、やっぱり特別なんだと思ってる。遥が、女の子の事で、アタシに相談するなんて、有桜ちゃんが初めてだったから」
「え?遥が、私のこと?」
「そ。泣かしたからって、アタシに相談きたよ、1か月位前かな」
ーーーー海に行ったあたりだ。
あの頃から、遥は以前より増して、私に優しくしてくれた。泣かないように、いつも気にかけてくれた。
「……そんな顔してくれるってことは、遥はちゃんと有桜ちゃんに、優しくできてるってことだよね。……安心した」
ポタンと涙が落ちた。
「遥ね、多分有桜ちゃんを、ちゃんと見たくて一生懸命なんだと思う。
でもアイツは……甘えるのが苦手な、寂しがり屋だから。那月ちゃんが亡くなった寂しい心の隙間を、自分を犠牲にすることしか、埋めた気にならないんだと思う。
……ごめんね、有桜ちゃんからしたら、しんどいよね、遥が中途半端で」
ーーーー私は首を振った。
「遥の……側に居たい……ただ遥に笑ってて、欲し……くて」
渚さんが、優しく私の背中を摩ってくれる。
「うん、ありがとう。……遥を好きになってくれて……おかえりって待っててくれて」
背中から伝わる渚さんの掌の温もりが優しくで温かくて、私の涙は止まらなくなった。
ーーーー遥に会いたくなった。もう引き返せないほどに、私は遥に恋していた。
たとえ、この恋が、叶わなくても、遥の側から離れたくなかった。