冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「未来と明日海の好きなものが俺も好きだよ。だけど、リクエストするなら、今度はカレーが食べたいな。前、昼食に作ってくれたのが嬉しかった」

豊さんは優しく微笑む。未来が豊さんの頬をぺたぺたと触る。またほくろを見つけて、指でぎゅうぎゅう押し込んでいる。豊さんが左目をすがめて困った顔で続けた。

「家のカレーは、母が亡くなって以来食べていなかったんだ。明日海が作ってくれたカレーは美味かったよ」
「……わかりました。腕によりをかけてカレーを作りますね」

私が作ったカレーが豊さんの懐かしい記憶を思い出すたよりになるなら、こんなにいいことはないように思われた。

「でも、よかった。この前のときは食べても無表情だったし、口に合わないかなって思ったんですけれど」
「ものすごく嬉しかったに決まっているだろう。ただ、あまり喜んでいたら格好悪い。俺ばかりがきみを好きなのがバレてしまうし……」

そう言って豊さんはふいとそっぽを向いてしまう。そんな子どもっぽい仕草、今までは見せてくれなかった。豊さんとまた距離が縮まったようで嬉しい。

「ふふ、じゃあ、お夕食にしましょうか」

三人で楽しく夕食を食べた。少し前から、私たちはだいぶ家族らしくはなっていたけれど、もう名実ともに家族になるのだ。

「未来、美味しかったな。パパと遊ぼうか」
「あーい」

未来は手をあげ、可愛いお返事をし、リビングをたったと走っていく。
そのときだ。私のスマホが鳴った。
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