冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「未来よりもっと柔らかいですよ。首も据わってないと思いますし。……将来の練習ですから、頑張ってくださいね」

その言葉の意味が豊さんにはちゃんと伝わっているようだ。私を見て、少しだけ目を見開く。それから嬉しそうに目を細めた。目尻が赤い。

「ああ、そうだな。練習しておかなければ」

いつか、私たちのもとに未来の弟か妹がやってきてくれたらいい。家族が増え、賑やかになって、幸せがもっともっとあふれてくれたらいい。

「まあま、ぱあぱ。あー!」

未来が窓の向こうの飛行機を指さして大きな声をあげる。

「未来、これからあれに乗るよー」
「よー?」
「お空を飛ぶんだ。わくわくするなあ」
「しゅるねー」

未来は相変わらずわかっているのかわかっていないのかわからない返事をする。絶妙に会話になっているのだから面白い。彼女なりのコミュニケーションが可愛らしくて、私も豊さんもいつも笑ってしまう。

豊さんがあいた手を私の手に絡める。繋いだ手を離すことなく私たちは前を見た。
紡いでいこう、家族の時間を、幸せの記憶を。
これから時間をかけて。



(おしまい)




***
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次ページから番外編をお送りします。
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