冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「未来、未来。いい子だ」
「やーっ! まあまーっ! やああああ!」

泣き叫ぶ未来を一生懸命抱いてあやしているのは、豊さんだ。背をぐいんとそらして暴れる未来の頭と腰を支え、優しく揺らして語り掛けている。

「未来、もう寝よう。ママは眠っている。未来も寝よう」
「なああああ、わあああああ」
「しー。ママを起こしちゃだめだ。未来、ほら滑り台してみるかい?」

未来のお尻を滑り台にくっつけ、滑らせている。実際は豊さんが抱っこして滑ったふうにしているだけ。未来はまったく気に入らない様子で、身体を反り返らせてぎゃあぎゃあ泣いている。

豊さんが未来の面倒を見てくれている。
どうして? どうして、そこまでしてくれるの。
私は渾身の力でどうにか身体を起こした。

「ゆたか……さん」

ようやく唇が言葉を形作れた。豊さんが未来を抱いたまま、こちらを見る。

「明日海、……すまない。勝手なことをした」

そう言う声も未来の大泣きにかき消されそうだ。私はよろよろと立ち上がり、豊さんの腕から未来を受け取る。興奮状態の未来も、私のことはまだわかるのか、しがみついてすんすん鼻をすする。わずかに落ち着いたようだ。

「全然だめだったな。泣き止ませられなかった」
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