冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「違うんです。今日は未来、ずっと機嫌が悪くて。私が眠ってしまって……、豊さんがあやしてくれなかったら、危ないことになっていたかもしれません」

驚いた気持ちもあった。しかし、それより豊さんへの感謝の気持ちと、眠ってしまった自分自身への罪悪感で涙が出そうだった。

「豊さん、ありがとうございました」
「いや、本当に何もできていないんだ。礼を言われると逆に心苦しい」

またぐずぐずとしている未来の背を、豊さんがさする。その目は慈愛に満ち溢れている。小さな命への愛情なのだと思う。父性などではなく、当たり前の感情。だけど、その気持ちがものすごくありがたいし、彼がそんなふうに未来に接してくれるとは思いもよらなかった。

「寝室に連れていきますね」

豊さんから離れ、和室の戸をあける。すると未来がまだ火が付いたように泣き出した。

「だーあーっ!」

豊さんに向かって両手を広げて泣いているのだ。引き離されるのを拒むような態度。
この子は本能のレベルでわかっているのかもしれない。豊さんが自分にとってなんなのか。
豊さんも明らかに狼狽した顔をし、私を見た。

「明日海、きみがよければ、寝かしつけを手伝う。そちらの部屋に入ってもいいか」
「はい、私はかまいません」

でも、いいのだろうか。そんなことまでさせてしまって。
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