冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
和室は未来のお昼寝からずっと布団を敷きっぱなしにしていた。未来を寝かせ、その横に豊さんが肘をついて横になる。まだシャツとスラックス姿なのに、申し訳ない。

私は手早く未来のオムツを替え、反対側に寝そべった。べそをかく未来のお腹を撫でる。
未来は疲れたのか、左右から挟まれた状況に満足したのか、布団に寝かせるとすぐにうつらうつらし始めた。
やがて、深い寝息が聞こえだす。大暴れの未来、ようやくの就寝だった。

「きみはずっとひとりで未来を育ててきた。だから、今の状況も大丈夫だと思っていた。育児がこれほど大変だとは、味わってみるまでわからなかったよ」
「ご、ご迷惑をおかけしてすみません」
「そうじゃない。……もしかしてきみがこの前、実家の仕事を手伝いたいと言ったのは、育児から離れる時間がほしいという意味だったのか?」

豊さんに尋ねられ、私はおずおずと頷いた。常夜灯の光で互いの姿はオレンジ色に浮かび上がっている。

「未来の成長が嬉しい反面、赤ちゃんから幼児になりつつある時期に戸惑いを感じています。今まで通りにいかなくて、自分でも情けなくて……。少しでも、大人と関わる時間がほしいと思ってしまいました」

豊さんはしばし黙っていた。それから、私を見つめ言う。

「きみはひとりでなんでもできると思っていた。しっかりしているし、真面目だ。しかし、育児も平気とは限らないな。俺は勝手に決めつけて、きみの苦労を無視してきたのかもしれない」
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