冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
豊さんは今日遅いと聞いている。食事はいらないとも。
夕方、未来に少し早めの夕食を取らせ、それから抱っこ紐に入れて家を出た。
作田くんの家に行くためだ。抱っこの揺れが気持ちいいようで、未来は電車に乗る前に眠ってしまった。

到着すると、まだ作田くんは帰宅しておらず、ゆなさんが出迎えてくれた。出産間近のゆなさんはお腹がかなり苦しそうだ。

「赤ちゃんの位置が下がってきているみたいなんです。子宮頚管も短くなってきて、子宮口も二センチくらい開いてるって」
「そうなんだ。それはお産が近づいてるって感じだね。私、未来のときはなかなか子宮口が開かなかったの。時間かかったなぁ」

ゆなさんの大きなお腹を見ていると、未来のお産を思い出してしまう。
陣痛が始まって、病院までひとりタクシーでむかった。痛くなるお腹と下半身に恐怖で泣きたくなったけれど、逃げ場なんかない。ひたすら、ベッドで背を丸めて耐えた。
陣痛も佳境に差し掛かった頃、藍と両親がきてくれた。それも痛すぎてあまり覚えていないくらい。

未来の産声を聞いたときも、たった今まで味わっていた痛みが鮮烈すぎて、感慨もなにもなかった。だけど、未来の顔を見て思った。
私に一生をかけて守るべき存在が、今日生まれたのだと。

「作田くんから聞いてると思うけど、彼を望の捜索になんか行かせないからね。ゆなさんについていてもらわなきゃ」
「でも、良樹くんすごく責任を感じてるので、行かせてもあげたいんです」

ゆなさんが沈痛な表情になる。
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