君を手に取る1秒前
思い出の丘
クラスの友人に聞く。
「なあ、紗奈は?」
「……え、お前彼氏なのに知らないの?楠木、お前が事故にあってから1回も学校来てねぇよ。」
「は………?」
紗奈が、学校に来てない?
どういう……
ふと、脳裏にある1つの答えが浮かんだ。
紗奈……責任、感じてるんじゃ……?
絶対にそうだと確信した。
紗奈は、とても優しい。
絶対に、自分よりも俺の事を優先する。
だから、紗奈は……学校に来なくなった。
余計に紗奈に会いたくなった。
紗奈が居そうな場所……
考えた始めた瞬間、すぐに分かった。
……あそこだ。
紗奈と俺の、思い出の場所。
そこは、海の近くの丘だった。
俺が、家の環境が嫌で家出した時、紗奈が一睡もせずに探してくれて、見つけ出してくれた。
俺が居たのが、あの丘だ。
紗奈に、持っていたスマートフォンで一言送る。
『ごめん。』
すると直ぐに既読が着いて。
そしたらもう、向かわずにはいられなくて。
足が病み上がりでもつれる。
歩道を走り、砂利道を登る。
「紗奈!!」
やっぱり、そこには紗奈の姿があった。
紗奈は、儚く笑って。
「やっぱり、来ると思った。だって健人、優しいから。記憶、戻ったんだね。」
「紗奈……」
「うん、話そっか。」
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