あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。
恋した女性と結ばれてアイザックの気分は高揚していた。
愛の告白をしたわけではなかったが、自分たちの身体の関係は抜群に良くて、唯一無二の存在だと確信した。
何度か身体を重ねると――アイザックのミリーへの想いがどんどん募っていく。
だけれど、最初は嬉しそうだったミリーだが、最近は会っても表情が翳る一方だ。
どんなに体を悦ばせても、なぜだか一層、彼女の心は離れていくばかりだ。
なかなか自分からのキスも許してはくれない。
そろそろちゃんと自分の妻になってほしいと伝えたい。
だけれど、前の妻を寝取られた男なんて格好悪いと思われるんじゃないかと思ってしまって、真実を告げることが出来ずにいた。
(ミリーは俺のことを結婚経験はない男だと思っているだろう……)
言わないと――清廉潔白なミリーは嘘を吐くような男は嫌いだろうから……言わないといけない。
だけど――ミリーから前妻マリーンのように、別の男性が好きだと言われるのではないかと――アイザックは伝えることに臆病だった。
そんな中、前妻であるマリーンから手紙が来た。
一方的に会いたいと、へき地に来る日付を載せて。
しかも――子どもも生まれていると書かれていた。
「俺の子じゃないに決まっているだろう……わざわざ俺の姓を名乗らせて……離縁状を出していなかったというのか……」
おそらくバッシュの子だ。
だけれど、バッシュは逃げたのだろうか。
怒りがこみあげてきて、手紙をぐしゃりと握り潰してしまった。
とはいえ、前妻のマリーンには離縁を受け入れてもらえるように説得するしかない。
そんなことを思いながら、愛するミリーの元に向かう。
こんなにも自分の身体だけでなく心まで満たしてくれる女は他にはいないと思いながら、まだマリーンとの離縁が成立していなかったことへの罪悪感に苛まれながら、ミリーに想いの昂ぶりをぶつけた。
そうして――前妻のことだとか知られたくなくて、アイザックは嘘を吐いた。
「ミリー、これから特別任務があるんだ。だから行かないといけない」
「そう……」
アイザックの瞳には、答えるミリーの瞳が虚ろで、自分のことなど何の興味もなさそうに見えた。
(どうしようもなくダメな俺だけが……ミリーを愛してしまっている……)
愛していると告げたところで迷惑がられるかもしれない。
だけれど――彼女を抱いた充足感で、前妻マリーンと過去の自分に打ち克つことができる気がした。
「行ってくる……ミリー」
彼女の唇の端に口づけることに成功した。
そのまま出ていったが――彼女と唇の端だけれども口づけに成功出来て、アイザックの心は弾んだ。
再度ドアを開けて伝えてしまった。
「お前以上に俺と相性の良い女はいないと俺は思っていて……いや、言い訳がましいな……それじゃあ、また……」
そう、告白するのは、清廉潔白なミリーに似合うように、自分自身も清廉潔白な身になってからだ。
「ミリー、愛している……」
まだ彼女に伝えることの出来ない言葉を口にしながら、アイザックは過去と対峙しに向かったのだった。

