片翼を君にあげる③
「その笑顔……」
「え?」
「其方のその笑顔が、ずっともう一度見たかった」
「っ、……」
素直な、率直な言葉は反則だ。
「やはり其方には、笑顔が似合う」
「っ〜〜、瞬空《シュンクウ》!もうそれくらいでいいですわっ」
今までの分が一気に来たかのように、突然過ぎる熱い言葉攻めに心臓が保たない。
私が顔を真っ赤にしながらそう言うと、瞬空は「?」な表情をしていてまるで分かっていない様子。
直球と言うか、素直と言うか。
ストレートな性格なのは知ってましたけど、まさかこれ程なんて……っ。
これまでとは違う慣れない雰囲気に、鼓動が身体に響く程に高鳴る。
あぁ、私、恋してるんだーー。
ようやく素直に、私は実感していた。
私はこの人が好きで、ずっとこうして隣を歩きたかった。
一緒に色んな場所へ行って、例え好きな物を共感出来なくても、一緒の時を刻んで……。
そう、色んな彼を知って、私の事も知って欲しかったのだ。
初めて一緒に歩いた。
初めて一緒に外食した。
初めて、一緒に稽古以外の事をした。
今日と言う日が訪れただけで、私にはこれ以上ない掛け替えのないものだった。
……
…………
………………。
あっという間に、過ぎていく時間。
楽しいデートも終わりが近付いてくる。
間も無く春になり、桜が咲き乱れるであろう並木道を最後に一緒に歩いていると、隣の瞬空の足が突然止まった。
少し前から無口……。と、言うか、普段大体無口なのだけど、並木道に入ったあたりから少し様子が変わった事に私は気付いていた。
だから、私も歩みを止めた。
ゆっくり振り返ると、そんな私の前でスッと瞬空が片膝を着く。
その姿にドキッと胸を打たれると、私の期待を裏切らない言葉を……彼はくれた。
「ノゾミ、私と共に蓮華国へ来てくれ。私の傍に、ずっとずっと居てほしい」
そう言って差し出された瞬空の手には……。誰に聞いて用意したのか、私の住む地方の告白に贈る、美しく輝く指輪があった。