片翼を君にあげる③
【瞬空side】

ミライ殿との下剋上を終え、倒れた私が次に目を覚ました時。傍に居てくれたのはノゾミだった。
私が眠るベッドの横で、ずっと看病をしてくれていたのだ。

瞬空(シュンクウ)っ……!
気が付きましたのね、良かった……っ」

そう、少し泣きそうな少女のようにホッとした表情(かお)を見た瞬間。私は再度、彼女を愛しているのだと実感した。

これからの人生、

こうして目を覚ます度に、1番最初に目にする存在は彼女が良いーー……。

と、心の奥底から思ったのだ。


「っ、瞬空(シュンクウ)
ダメですわ!暫くは安静だと言われましたでしょうっ?」

じっと、ただ寝ているだけなんぞ苦手で、ベッドから起き上がろうとすると叱られた。

「医療室の食事だけでは味気ないでしょう?そう思って、作ってきましたわ!はいっ!!
お味はどうーー……っ?瞬空(シュンクウ)?何だか顔が青いですわよ???」

あんなに甘い玉子焼きを食べたのは、生まれて初めてで……。昔、ノゾミに飴玉を貰った事を思い出した。

「もう、消灯時間……。
ねぇ、瞬空(シュンクウ)。明日も、来てもいいかしら?」

明日もーー。

そんな約束を交わす事が出来る日が来るとは、思わなかった。
そして彼女が、そんな事を問う程に寂しがり屋で甘える一面があると言う事も、初めて知った。

入院していた二週間と言う期間は、私とノゾミが知り合ってからの年月よりもうんと短い筈なのに……。今までよりもずっと、彼女を近くに感じる事が出来た。
そして、今までよりもずっと、彼女を愛おしく想った。

これからもずっと、一緒に居たい。
傍に居てほしい。
このままずっと、この、今この時が続けばいい、と……。馬鹿な考えや望みすら私の頭の中に過った。

怒られるのも良い。
少々味音痴な手料理も良い。
もっと我が儘で、甘える姿を見てみたい。

そんな欲が、私の中に生まれた。
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