*結ばれない手* ―夏―
【Part.2:夏】結ばれない手 ―彼のカコと彼女のミライ―

[1]酔いと本音?

★この度はお手に取ってくださり、誠にありがとうございます♡

1話目と2話目の間に、主要キャラクターのプロフィールを紹介しておりますので、安心してお読みください(^人^)



 黒々とした涼しい夜空に、金色の幾万粒の星達が(またた)いていた。 

 世の中が夏休みとなるお盆の頃は、全国を巡業している珠園(たまその)サーカスにとっても書き入れ時だ。

 そんな満員御礼でお休み返上の二週間を終えたメンバーは、いつになく解放された気分に(ひた)っていた。

 特に若い男性陣はお酒の力も手伝って、もはやご機嫌と言うよりは何と申しますか……?

「あれぇ? ビール、終わったった?」

 空の缶ビールを逆さに手を振る(くれ) 純一の顔は、既に赤く火照(ほて)っていた。

 ろれつも上手く回っていない上に、普段演じるピエロのおどけた仕草よりもおかしなステップで、食堂として使用されているプレハブの出口に向かってゆく。

「おーい、暮さ~ん、もうビール、取りに行ってるからだいじょぶだいじょぶ~」

 テーブルに頬が付きそうなほど小首を(かし)げた猛獣使いの鈴原が呼び止め、暮は怪しい足取りで何とか百八十度のターンをし、こちらを向いた。

「だあれが持ってくるのさ~?」

「ん? モモが取りに行った」

 室内で唯一いつもと変わりのない空中ブランコ乗りの桜 凪徒(なぎと)が、スルメを(くわ)えたまま一言答える。

 一番呑んでいる筈の凪徒だが、彼は『ザル』と言うより『枠』と言いたいくらいの酒豪だ。


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