*結ばれない手* ―夏―
「ほぇ? モモってもう呑める歳だったか? ……って!!」

 ふらつきながらも凪徒の前まで戻った暮が、ギリギリ手前の椅子に尻を着いた。

 が、案の定バランスを失いテーブルに顎を強打した。

 周りには先にギブアップした団員数名が、床をベッドに眠りこけている。

「暮、お前呑み過ぎ。明日二日酔い確定だな。モモは配膳してるだけで呑んでない。あいつはまだ十七だ」

 凪徒は暮の目の前に水の入ったグラスを差し出し、淡々と返答を済ませると自分のビールを飲み干した。

「なんらよ~モモ、もう十七かぁ? 凪徒、そろそろもらっとけー」

「はぁ!?」

 暮の爆弾発言に、さすがの凪徒も声を荒げたが、

「そうだそうだー、もう結婚も出来る歳だぞ~」

 隣の鈴原が同調し悪乗りして、凪徒の肩に手を回した。

「鈴原(にい)まで悪酔いし過ぎだ。夫人に怒られるぞ」

 と、途端その言葉で鈴原はしらふに戻り、慌てて手元のチーズ(たら)を口に押し込んだ。

 元空中ブランコ乗りで、今は夫と共に猛獣使いとして活躍する麗しき夫人は、亭主も上手にあしらっているということか?


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