*結ばれない手* ―夏―
「今日の公演、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですよー! まかせといてくださいっ」
けれどそれはどう見ても強がりにしか思えず、面の皮に薄っぺらく投影された空元気が、どうにか機能しているに過ぎなかった。
しばらくそんな本音ではないやり取りが続きながら食事の時間は終わったが、モモはなかなか席を立てずにいた。
暮も相変わらず困った表情で真正面に座ったままだ。
誰もいなくなった食堂プレハブでどちらからも退室のタイミングを切り出せずにポツンと二人残っていると、モモのずっと後ろの扉が開いて現れたのは鈴原夫人だった。
「モモちゃん? あ、暮さん……モモちゃんにちょっと──良いかしら?」
「あ、ああ。じゃあ、モモ、また後でな」
「はい」
暮はモモと自分のトレイを下げながら、夫人と入れ替わるように部屋を後にした。
夫人はモモの右側に置かれたポットからお茶を淹れて差し出し、そのまま隣に腰かけた。
「だ、大丈夫ですよー! まかせといてくださいっ」
けれどそれはどう見ても強がりにしか思えず、面の皮に薄っぺらく投影された空元気が、どうにか機能しているに過ぎなかった。
しばらくそんな本音ではないやり取りが続きながら食事の時間は終わったが、モモはなかなか席を立てずにいた。
暮も相変わらず困った表情で真正面に座ったままだ。
誰もいなくなった食堂プレハブでどちらからも退室のタイミングを切り出せずにポツンと二人残っていると、モモのずっと後ろの扉が開いて現れたのは鈴原夫人だった。
「モモちゃん? あ、暮さん……モモちゃんにちょっと──良いかしら?」
「あ、ああ。じゃあ、モモ、また後でな」
「はい」
暮はモモと自分のトレイを下げながら、夫人と入れ替わるように部屋を後にした。
夫人はモモの右側に置かれたポットからお茶を淹れて差し出し、そのまま隣に腰かけた。