*結ばれない手* ―夏―

[33]兄妹と家族

「まったく似た者コンビだのぉ……」

「え?」

 翌日火曜日の夜。

 モモは片付けを終えて、先に取り付けていた約束の時間に団長室を訪れた。

 緊張の面持ちでテーブルの上に差し出された封書を見下ろし、目の前の団長が口髭(くちひげ)をヒクヒクと動かしながら笑う。

「あいつも暮の部屋に、こいつを置いていった」

 と、団長はモモの封筒の隣に、凪徒の辞表を並べると、

「似た者コンビではなくて、似た者兄妹(きょうだい)なのかもしれませんね……」

 モモも苦笑いをしながら一瞬切ない表情を上げ、再び(うつむ)いた。

「まぁ、それはさておき……わしはどちらも受け取る気はないぞ」

「も、もちろんっ、先輩の辞表は破棄してください! あたしが必ず連れ戻しますから」

 今一度上げたモモの面差しには、強い決意が感じられた。

「どうやって連れ戻す? あいつのおやっさんは手強(てごわ)いぞ……との噂だぞ?」

「当たって砕けます。いえっ、砕けちゃダメなんですけど、とにかくやれるだけやってみます!」

「うーむ……」

 組んだ腕から左手だけが右頬に伸び、しばし考えを巡らすようにさする団長。

 が、少しして「ちょっと待っとれ」と(つぶや)き、携帯で暮を呼んだ。


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