*結ばれない手* ―夏―
思い切り声を張って飛び出させた言葉は最後には切れ切れになったが、全ての想いを吐き出せた気がした。
呼吸を整えるために上下に波打つ身体は、ただひたすら凪徒の姿がぼやけないように瞳に意識を集中させている。
けれど当の凪徒はモモを見上げたまま一ミリも動かなかった。
「あ……あ……」
全員の沈黙に耐えかねたように、モモの口から言葉が零れた。
「せ……んぱい、は──」
「俺は……?」
興奮した心とは違う、どこか別の思考が勝手に喋り出した。
その続きを待つように凪徒が問い返す。
「先輩は……あ、あたしの『相棒』、なんです!」
「……どこかで聞いた台詞だな」
凪徒の表情に僅かな変化が帯びた。
「せ、先輩のいないサーカスなんて、『麺のないラーメン』です!」
「それもどこかで聞いた台詞だ」
少しだけ意地悪そうに細められた眼と、愉しそうに上がる右の口角。
「そ、そうでしたっけ……?」
反面モモはおどおどと挙動不審になり始めた。
自分が一体全体何を口走っているのか、もはや自分でも分からなかった。
呼吸を整えるために上下に波打つ身体は、ただひたすら凪徒の姿がぼやけないように瞳に意識を集中させている。
けれど当の凪徒はモモを見上げたまま一ミリも動かなかった。
「あ……あ……」
全員の沈黙に耐えかねたように、モモの口から言葉が零れた。
「せ……んぱい、は──」
「俺は……?」
興奮した心とは違う、どこか別の思考が勝手に喋り出した。
その続きを待つように凪徒が問い返す。
「先輩は……あ、あたしの『相棒』、なんです!」
「……どこかで聞いた台詞だな」
凪徒の表情に僅かな変化が帯びた。
「せ、先輩のいないサーカスなんて、『麺のないラーメン』です!」
「それもどこかで聞いた台詞だ」
少しだけ意地悪そうに細められた眼と、愉しそうに上がる右の口角。
「そ、そうでしたっけ……?」
反面モモはおどおどと挙動不審になり始めた。
自分が一体全体何を口走っているのか、もはや自分でも分からなかった。