素敵な天使のいる夜にー4th storyー
「紫苑…」
「もしかして、後悔してるのか…?
精神科病棟での実習が沙奈本命だったから」
「まあな…。俺がドクターストップをかけたとはいえ、沙奈はちゃんと自分で休む道を選んだ。
自分で決めた決断だからこそ本音も辛い気持ちも隠すことがあるかもしれない…」
「…そうね。」
「虹夏!?」
「あの子はすごいわ…。これ、見て。」
虹夏から渡されたものは、この実習に向けて準備してきた資料に病気のこと医師としての基礎内容が書かれた何冊ものノートだった。
「大学で教えてもらえることには限りがある。
それに、自分で考えて勉強法を身につけて努力しなければ医者になんて到底なれない。
それを彼女は病気のハンデを負いながらもここまで準備した。
他の生徒と比べたらいけないけど、他の生徒以上に真剣に取り組んで医者になるための覚悟が形として見えた結果だと思う。
並大抵の覚悟ではここまでできないわよ…」
虹夏はそう言って、少しだけ切ない表情で目を伏せた。
「これで、医者になる道が閉ざされたわけではない。
虹夏も大翔も、沙奈の為にベストな判断をしてくれてありがとう。
もし、沙奈が落ち込んでたり自分を責めたりしていたら俺が責任を持って沙奈のサポートをするから。」
「俺も…。これからも沙奈のサポートをしたい。」
「ありがとう。」
本当にそう思った。
沙奈は昔から何でも一人で抱え込む。
苦しくても笑う。
辛くても大丈夫と言う。
気づかれないように感情や本音を隠す。
だからこそ心配だった。
「でもな。」
紫苑が少し真面目な顔になる。
「今の沙奈は俺達が思ってる以上に強いと思う。」
「…そうかな?」
「まぁ…もちろん落ち込むだろうしたくさん涙も流すと思うけど。」
そう言って紫苑は笑った。
「それでも沙奈は前を向く。」
紫苑のその言葉に静かに目を伏せた。
誰よりも分かっている。
何度も病気に苦しみながら。
何度も挫折を味わいながら。
それでも沙奈は立ち上がってきた。
まっすぐ生きている姿を近くで見てきた。
だからこそ強く守りたいと思った。
そして。
そんな彼女を信じたいと思った。
「……そうだな。」
小さく呟く。
「沙奈の回復も…医者になれることも信じてる。」