素敵な天使のいる夜にー4th storyー

生きる道

ーside 沙奈ー


大翔先生が病室を後にしてからも。


休むことを自分で選んだとしても。


その覚悟や決心は未だに揺らいでいた。


これ以上、自分の体に負荷をかけられない悔しさと


大翔先生のドクターストップを押し切った後の自分を想像したら涙が止まらなかった。


泣いてばかりはいられない。


自分で医者になる道も、休むことも選んだのだから。


「いつからこんなに…弱くなったのかな…」


それからしばらくして、静かに扉が開いた。


「沙奈…」


「大翔…先生。」


いつもと変わらない優しい声で私の名前を呼ぶ。


「…お仕事終わったの?」


これ以上、大翔先生に心配をかけたくなくていつも通りに笑顔を向ける。


「あぁ…。」


そう返事をすると、大翔先生は椅子をベッドサイドまで引き寄せて私のそばに座った。


2人の間に、静かな時間が流れる。


いつもと変わらないこの空間が私の冷たい心を少しずつ溶かしていくようだった。


「沙奈…。無理に笑わなくていい…」


「えっ?」


大翔先生と目を合わせると、大翔先生は頬に手を添えて私の涙の跡をそっと指でなぞる。


「…出会った時から、隠すのが下手だな…」


苦しい程の優しい声に耐えきれず、添えられた手に私もそっと手を重ねる。


「俺の前では、無理しなくていい。


前から言ってるだろう。泣きたい時は泣いてもいい。


悔しい気持ちも、頭の中で散らかってる感情も全ていつでも俺にぶつけていい。」


「…大翔先生。」


大翔先生は、優しく私を抱き寄せた。


「…本当の気持ち、言っても…いい?」


「当たり前だ。」


「……正直、悔しい…」


自分でも驚く程に声が震えていた。


「うん…」


「この実習に向けて、医者になるためにたくさん頑張ってきたのに…」


どんなに頑張ったとしても、結果的にここで止められるとしたら何のために頑張ってきたのか…


今までの努力が全て意味がなかったのではないか…


本命の実習だったからこそ、本当に辛かった。



「…知ってる。」


大翔先生は静かに答える。


「誰よりも知ってる…。


夜遅くまでこの実習に向けてたくさん準備をしていたこと


虹夏の書いた論文を読んでいたことも…


これから担当する患者の力になれるようにってたくさん生活背景や病気のことが載っている教科書をたくさん読んできたことも…」
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