素敵な天使のいる夜にー4th storyー
予想もしていなかった教授からの言葉に、自分自身の言葉も失った。
そんな私を見ていた大翔先生は、後ろから優しく私の背に手を添える。
「もちろん。簡単なことではない。他の実習との兼ね合いになるから、君自身にもさらに負荷をかけることになる。
病院側との調整だって必要になる。
でもね…。私たちは、沙奈さんを留年させる方向ではなく医師になるために何ができるのか。
皆んなと一緒に卒業をさせる方法で動いていきたいんだ。」
教授のその一言に、今まで張り詰めていたものが音を立てて崩れた。
「…川崎教授…。」
川崎教授の思いに、優しい表情に一度溢れ出した涙は止めることができなかった。
大翔先生は、私が安心できるようにと後ろから優しく抱き寄せてくれた。
それから、川崎教授は言葉を続けた。
「医師になるためには、命を救うための知識や技術が必要だ。
でもね、それと同じくらい大切なのは人を想う心なんだ。
残念ながら、それを持っていない医師なんてたくさんいる。
沙奈さんは、その大切な物を入学した時から既に持っている。
そんな医師はほんの一握りでしかいないから…。
だからこそ、我々は簡単に諦めるつもりはない。
ハンデがあったとしても、必ず君を医師にしてみせる。」
何度も涙を拭いながら、頷いた。
「…教授、本当にありがとうございます。」
教授は、ゆっくり立ち上がり優しく私の頭を撫でる。
「焦らなくていい。今は、ゆっくり休んで体調を整えることが沙奈さんの課題だ。
勉強は逃げない。
実習も逃げない。
医師へなるための道も沙奈さんにはある。
だから、何も心配しなくていい。」
「…はい。」
ゆっくり顔を上げ川崎教授は私の返事を聞いて安心したように笑った。
「それじゃあ、神代君。沙奈さんの退院が決まったら連絡してね。
沙奈さんも、まだ何か不安なことが出てきたらいつでも連絡していいから。」
川崎教授はゆっくりと病室を後にした。