君の甘さには敵わない。
朝樹は彼女に対して乱暴な事はして来ないし、千晶さんがこんな事をするなんて想像出来ない。



という事は、今私の目の前に居るのは、


「颯、さん…」



そうだ、清と涼がリビングに来たのは私に寝ていいよと言う為で、でもそれを私に伝える様に言ったのは颯さん。


(やられた…!)


最後の最後に、颯さんが仕掛けた罠に引っかかってしまった。



「俺がどんだけ待ち侘びたと思うんだよ」


目を覆っていた手が離れ、瞬きを繰り返した先にいたのは予想通りの男性の姿。


「颯さん、流石にやりすぎじゃないですか、」


「お前があの男に構ってんのが悪いんだよ」


余裕の無さそうな顔で私の腕を掴んだ颯さんは、冷たい目の奥に炎をちらつかせながらそう話しかけてくる。


「あれは私じゃなくてあっちが悪いんです、何回言っても離れてくれなかっ、」


「うるさい」


私の言い訳は呆気なく喉の奥に戻され、何の抵抗も出来ぬままベッドに押し倒された。


(ちょっ、え!?)


流石に、これはまずいのではないか。


今の颯さんはいつかの千晶さんみたいな狼の目をしていて、彼から理性が無くなるのも時間の問題だ。


「待って下さい颯さん、駄目駄目駄目ストップ!」


 必死に声を上げるのに比例して私の腕を掴む颯さんの手には力が込められ、多分私の声なんて聞こえていない。
< 28 / 32 >

この作品をシェア

pagetop