プリザーブドLOVE  ~けっして枯れない愛を貴女に~
 田所が持参した資料を封筒にしまい、自席に戻ろうとしたとき、「杏子」と声をかけられた。

 見ると、亘が会議室のドア口に腕を組んでもたれかかっていた。
「とし……所長」

 危うく下の名前で呼びそうになる。

 彼は姿勢を正して後ろ手でドアを閉めると、わたしのほうに歩み寄ってきた。

「あいつ、なんか見とれてたぜ、杏子に。気があるんじゃない?」

「まさか。あんな若い子がわたしなんかに興味持つわけないって」

「そんなこと言って、まんざらでも無さそうな顔してたじゃん。つまみ喰いしようと狙ってんじゃないのか」

 ……仮にも、自分が現在進行形で付き合っている女に向かって、よくそんなことが言える。

 こんな無神経な男だったっけ。

 ちょっと呆れたけれど、まあ、亘も本気で言っている訳ではなく、ありえないことと、たかを括って、軽口を叩いているんだろう。

 目くじらを立てるのは大人げない。
 わたしも軽口で応酬することにした。

「バカ。あるわけないでしょう。それにその発言、完全にアウト。大企業ならセクハラで懲罰委員会にかけられるわよ」

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