プリザーブドLOVE  ~けっして枯れない愛を貴女に~
 亘がチェックインしている間、ロビーの突き当たりの、広々とした一枚ガラスの窓から風景を眺めていた。

 明滅する電飾のように、海の上で光が踊っている。
 波は穏やかで、風も凪いでいた。

 そんな風景とは裏腹に、わたしの心のざわつきはどんどんと高まっていく。

 ここまで来てしまったら、本当にぐずぐずしていられない。

 覚悟を決めなければ……

 亘とフロントの人の話し声が聞こえてくるほど、ロビーは静かだった。

 そのとき。
「杏子さん」

聞き覚えのある声が、わたしを呼んだ。

 気のせいだ。
 こんなところにいるはずがないじゃない。

 幻聴が生じるほど、わたしは田所に未練があるのだろうか。
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