プリザーブドLOVE  ~けっして枯れない愛を貴女に~
 半信半疑のまま、わたしは振りかえった。

 陽光に満ちた風景を眺めていた目には室内は暗く、しばらく何も見えなかった。

 ソファーから立ち上がった人がいる。

 目を凝らしているうちに暗さに慣れ、こっちに向かってくる田所の姿をはっきり認識した。

「杏子さん」
 もう一度呼ばれる。
 なんで?

「どうして、こんなところにいるの?」

「おれが呼んだんだよ」
 チェックアウトを終えた亘がわたしたちのそばまでやってきていた。

「昨日の夜、会社を出たら、出口のところで、こいつがずぶぬれで立ってたんだよ。話があるって」

 亘は、ここじゃ落ち着いて話せないなと言い、ひとまず部屋に行こうと、エレベーターホールに向かった。
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