花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
「春の花だからかな。チューリップの花って鮮やかな色してるしね」
そんな話をしながら小高い丘を上って行くが、電動アシストのない自転車でかなりヘトヘトにーー。
「私……体力落ちたかも」
ゼーハーいいながら自転車を漕ぐけれど、なかなか前に進まない。
「花音は運動不足だよね。あともうちょっとで登り切るから頑張れ」
ヨレヨレになって走っている私に彼が爽やかに笑ってエールを送る。
なぜこの坂をあんな軽快に走れるのだろう。
忙しいのにいつ鍛えているのか謎だ。
丘の上に着くと、水色の絨毯が私たちを迎えてくれた。
「わあ、ネモフィラ、綺麗」
美しい景色を見て自転車の疲れも吹き飛ぶ。
「今年は暖冬だったせいか、例年より早く咲いたみたいだよ」
「そうなんですね。この景色、なんとなくテレビで見た覚えがあるんですけど、茨城だったんですね。一度見てみたいって思ってて」
「連れてきてよかった。ずっとアニメ見ててもよかったけど、せっかく晴れたんだから、外に出ないとね」
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