花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
確かにプライベートジェットは持っているが、なぜ必要なのか意味がわからない。
「なにがありました?」
理由を聞いたが、彼はすぐに語らず前置きする。
「落ち着いて聞けよ」
落ち着くのはそっちだと言いたくなったが堪えた。
彼が電話してくるなんて花音のことに決まっている。
「落ち着いてますよ。で、なにがあったんです?」
先を促すと、彼はようやく話し出した。
「祖父が花音を連れ出して、ラドクリフに渡した。ラドクリフの奴、花音を連れて台湾に行ったらしい」
ディランが花音を連れて台湾に?
「とりあえず、羽田に向かいます。詳細は後で教えてください」
電話を切ると、神宮司の声が聞こえたのか、田辺が顔を青くして俺に尋ねた。
「花音先輩……誘拐されたんですか?」
「彼女の従兄の話だとそうらしい」
スマホをポケットにしまいながらそう答えると、彼は深々と頭を下げた。
「すみません。俺がちゃんと自宅まで送っていれば」
< 214 / 251 >

この作品をシェア

pagetop