花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
呆然とする私の頭を軽く撫でて浩ちゃんが言う。
「車を待たせてる。行くぞ」
そう声をかけられても身体が動かない。
蓮が私の腰に回し、「花音行こう」と言って歩き出す。
空港を出ると、停まっていた黒塗りの車に乗った。
後部座席に浩ちゃん、私、蓮の順に並んで乗ったが、車の中でみんな無言だった。
三十分ほど車に乗って着いた先は、都内屈指の大学病院。
車を降りて病院に入ると、浩ちゃんについて祖父のいる病室へ向かう。
エレベーターで六階に上がり、長い廊下を早足で歩いて行くと、ICUが見えてきた。
ドアの前で消毒をして病室に入ったら、すでに伯父さんがいた。
祖父は奥にあるベッドに寝ていて酸素マスクをしていた。身体中に管がつけられていて見るのも痛々しい。
医師や看護師もいて緊迫した空気が流れていた。それだけ祖父が危険な状態なのだろう。
「あなたは一二三の……」
伯父が蓮に目を向ける。
「ええ。一二三の岡本蓮です」
蓮がそう言って伯父に軽く会釈した。
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