花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
「もうじいさんは意識が混濁している。もう花音が来たこともわからないかもしれない」
伯父が静かな声で私に告げた時、祖父の手が微かに動いた。
その手を握り声をかける。
「おじいちゃん!」
すると、祖父の口元が微かに動いた。
なにか喋ろうとしてる。
そばにいた医師が祖父の酸素マスクを外す。
「花音……蓮……」
祖父が私と蓮の名前を呼んでいる。
蓮が私の横に来て、私の手の上から祖父の手を握る。
祖父の目は閉じたまま。
私と蓮がいることに果たして気づいているだろうか?
ただのうわ言?
そう思ったら、祖父が私の手を握って来た。
「……幸せに……なれ。蓮……花音を……頼……む」
弱々しい声で祖父が私と蓮にそう告げる。
「必ず花音を幸せにします」
蓮が約束すると、それまで苦しそうな顔をしていた祖父がホッとしたような顔をして……その手から力が抜けた。
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