時価数億円の血脈
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とうとう、身体の関節まで曲がりにくくなってきた時、やっと病名をつけてもらえることができた。幸か不幸かといわれれば、とびっきりの絶望をプレゼントされたのだった。

医者はレントゲンや検査結果を見て頭を抱えていた。医者は私の手を見るとたちまち、すぐにあるところに携帯電話で連絡をとった末、出ていくと一人の男を連れて帰ってきた。真面目そうだが、白衣はしわがついていてなんだかくたびれたような見た目をしていた。

ただ年は二十代といったところか、天然か人工かわからないゆるい黒髪パーマで前髪が隠れていて、心底勿体ないなと思った。
その男は淡々と告げた。

「血流石化症候群、動脈硬化と違って体内の血液と身体の炭素原子と結びつき結晶化します。そして血流は活動が止まり、身体の血液はダイヤになる。火葬されたあと、ダイヤだけが残る。写真がある」

そこにあったのは肉はなく、骨もないが人間の形をした赤い宝石だった。
毛細血管の細かい枝分かれしたところまで結晶化されていて、教科書で見た血管のイラストより細やかに残っていた。

生きていた証をまざまざと見せつけられて悍ましさを感じる一方、とても美しいと思った。死んでいるのに死んでいないように感じる亡霊のようなその佇まいに私は死んでも現世に縛られるのだと悟った。
言葉を失ったまま、呆然とその写真を見ていると無表情に彼は続けた。


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