あなたとわたしで紡ぐ愛

「はっ、はなひへくらはい……!(離して下さい……!)」

「……んだよ。目覚まし時計といい、お前、最近反抗期か?」


160センチに僅かに届かない私より頭2つ分は高い位置にある漆黒の瞳。それがまたすっ、と細まって私を見下ろす。離してくれる気配は、全然ない。

だから暴れる心臓を悟られないように、自ら身を捩(よじ)ってその手から逃れた。


「…… そっ、そんなんじゃないです!言っておきますけど、毎朝なかなか起きないわ、寝ぼけて私を布団の中に引き摺り込もうとするわ、あれは全っ然僅かな労力じゃないですからね⁉︎もういい年なんですから、いい加減ちゃんと1人で起きられるようになって下さい!」

「……ふーん?随分生意気な口聞くじゃねーか、小娘が」


私の心の内なんて露ほども知らない渓くんは、私の言い分にふん、とその瞳を不機嫌そうに歪めて、私の頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。


「あー!またぐちゃぐちゃにして!せっかくセットしたのにっ」

「そりゃ残念だったな。……で、今日の味噌汁、何?」

「〜〜……っ、ネギとお豆腐のお味噌汁ですっ」


朝食を作る前にせっかくセットしていた髪の毛を乱され憤慨する私。

それでも律儀にお味噌汁の具を答える私を見やるその瞳が今度は優しげに細まるから、私の胸はきゅんと鳴く。
 
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