オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
冬馬が、出ていってすぐだった。
「失礼致します」
未央が、淹れたてのコーヒーを俺の前に置くと、本日のスケジュールです、と黒いファイルを手渡した。
「ありがとう」
マグカップを持ち上げた、俺を見ながら、未央が口を開く。どうせ、先程の冬馬のとの会話をドア越しに聞いてしまったのだろう。
先程、冬馬のきていた時間は、いつも未央がコーヒーを持ってくる時間だからだ。
「幸之助おじ様?……どうして、冬馬達に本当のこと仰られないのですか?」
未央は、切長の凛とした瞳を俺に向けると、俺の言葉を待つように、その場から動こうとしない。
「……見たのか?」
「はい、以前本棚のお掃除を、させていただいた時に、うっかり落としてしまって」
未央は、困ったような顔をしながら、頭を下げた。
俺は、本棚から、一冊の分厚いアルバムを取り出すと、1ページめくった。そこには、五歳の春樹と冬馬、四歳の明香が写っている。
「ずっと、三人の事を、こうして、写真を通して見守ってらっしゃったんでしょう?」
どの写真も隠れて部下に取らせたものだ。目線こそ、こちらに向いてはいないが、三人が本当の兄妹のように仲良く育ったことはよく分かっていた。
「……愛してらっしゃったんですね」
俺の手元に握られた、理恵子との写真を見て、未央がぽつりと呟いた。
「……由希がいながら、俺は理恵子に惚れ込んでね。本気だったよ……冬馬が、生まれてからも理恵子との関係は続いていてね。……由希が事故で亡くなった日は離婚話を切り出した直後だった。
恐らく……事故ではなく、自殺だと俺は思っている。曲がり角を曲がりきれずに車ごと転落したため、事故と処理されてるがね……。
俺は誰も幸せにできないんだよ……。こんなこと、今更……春樹にも、勿論冬馬にも言えなくてね」
幼い頃に、俺の親父とお袋は離婚して、俺は親父に育てられた。ビジネスの駒となるよう英才教育をうけて育った。
父親像が、分からなかったんだ。
だから、経済的な援助だけをして、遠いところから見守ることしか、俺にはできなかった。
また、正直、春樹を見れば母親そっくりの由希を思い出し、冬馬を見れば、俺自身にそっくりで愛人の子として縛られる、冬馬を、申し訳なく思っていた。
また明香には、極力会わないようにしていたのは、理恵子を思い出すから。
それなのに、俺は、どうしても、三人の我が子を手元から離したくなかった。
真っ当な愛情どころか、親らしい言葉の一つもかけてやれない癖に。
「失礼致します」
未央が、淹れたてのコーヒーを俺の前に置くと、本日のスケジュールです、と黒いファイルを手渡した。
「ありがとう」
マグカップを持ち上げた、俺を見ながら、未央が口を開く。どうせ、先程の冬馬のとの会話をドア越しに聞いてしまったのだろう。
先程、冬馬のきていた時間は、いつも未央がコーヒーを持ってくる時間だからだ。
「幸之助おじ様?……どうして、冬馬達に本当のこと仰られないのですか?」
未央は、切長の凛とした瞳を俺に向けると、俺の言葉を待つように、その場から動こうとしない。
「……見たのか?」
「はい、以前本棚のお掃除を、させていただいた時に、うっかり落としてしまって」
未央は、困ったような顔をしながら、頭を下げた。
俺は、本棚から、一冊の分厚いアルバムを取り出すと、1ページめくった。そこには、五歳の春樹と冬馬、四歳の明香が写っている。
「ずっと、三人の事を、こうして、写真を通して見守ってらっしゃったんでしょう?」
どの写真も隠れて部下に取らせたものだ。目線こそ、こちらに向いてはいないが、三人が本当の兄妹のように仲良く育ったことはよく分かっていた。
「……愛してらっしゃったんですね」
俺の手元に握られた、理恵子との写真を見て、未央がぽつりと呟いた。
「……由希がいながら、俺は理恵子に惚れ込んでね。本気だったよ……冬馬が、生まれてからも理恵子との関係は続いていてね。……由希が事故で亡くなった日は離婚話を切り出した直後だった。
恐らく……事故ではなく、自殺だと俺は思っている。曲がり角を曲がりきれずに車ごと転落したため、事故と処理されてるがね……。
俺は誰も幸せにできないんだよ……。こんなこと、今更……春樹にも、勿論冬馬にも言えなくてね」
幼い頃に、俺の親父とお袋は離婚して、俺は親父に育てられた。ビジネスの駒となるよう英才教育をうけて育った。
父親像が、分からなかったんだ。
だから、経済的な援助だけをして、遠いところから見守ることしか、俺にはできなかった。
また、正直、春樹を見れば母親そっくりの由希を思い出し、冬馬を見れば、俺自身にそっくりで愛人の子として縛られる、冬馬を、申し訳なく思っていた。
また明香には、極力会わないようにしていたのは、理恵子を思い出すから。
それなのに、俺は、どうしても、三人の我が子を手元から離したくなかった。
真っ当な愛情どころか、親らしい言葉の一つもかけてやれない癖に。