オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「だよな、アンタは自分しか大事じゃねぇんだよ。母さんはおろか、俺達3人のことも興味ねぇもんな。……よくこんな手紙貰って、俺と明香引き取って、放置できたよな……何が、母さんとは本気だっただよっ!ふざけんなよっ」

俺は、皺皺になった手紙を、デスクに叩きつけると、幸之助の胸ぐらを掴んだ。

幸之助は、煙草を灰皿に置くと、俺の瞳を射抜くように見て、静かに呟いた。

「……だから、お前も好きにしたらいい」

「それ、どういう意味だよ?」

「……そのままの意味だ。……芽衣とは、どうせ政略結婚なんだ。他に好きな女を作っても構わないし、子供さえ作らなければ、適当に離婚してもらっても構わない、もうプロジェクトは始まってるからな」

胸ぐらを掴む手を、俺は更に強めた。

怒りでどうにかなりそうだ。こんな奴と血が繋がっていることに心底嫌気どころか、自分まで嫌になる。

「最低だな!結局自分のことだけかよ!……アンタ、俺達のこと何だと思ってんだよっ!春樹も、俺も、明香も、アンタの所有物じゃねぇんだよ!」

幸之助は、俺の腕を掴むと、胸元から強引に俺の手を振り払った。

「冬馬……これでもお前の事を考えてるんだけどな」 

「は?」

俺の事を考える?意味が分からない。
幸之助は、ふっと笑った。ほんの少しだけ、寂しそうに笑ったのは気のせいだろうか。

「俺はアンタとは違う。芽衣と、結婚したら、生涯大切にして、泣かせない」

俺は、それだけ言うと社長室を後にした。

扉を閉める時、再度、幸之助を見ると、理恵子との写真とぐしゃぐしゃになった手紙を、ただじっと眺めていた。
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